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2022年06月22日 | Posted in インタビュー | Tags:
「美を呼吸する街・フィレンツェで学んだ」絵画科卒業 はせくらみゆきさんインタビュー
フィレンツェの芸術総合学院・アカデミアリアチの絵画科マスターコースにご留学された、はせくらみゆきさん。
すでにプロのアーティストとしてご活躍されているはせくらさんが、イタリアに行き、何を学んだのか?
イタリアへ行った経緯、そして得られた貴重な経験について、語っていただきました。
Q1:イタリアへ留学されたきっかけ、そしてアカデミアリアチを選んだ理由について教えてください。
アーティストとして活動していたので、今後、人生の経験値として、絵画を本場で学びたいという思いがありました。
それならば、フランスかイタリアに行き、西洋美術の歴史を現地で体感しながら、学んでいくのがよいであろうと考えたのです。
そんなある日、アカデミアリアチが主催するアートのコンペティションの公募を見つけ、応募してみました。
応募してからしばらく経ったある日。
日々の生活でいっぱいになっていたある日のこと、携帯電話にとあるメッセージが届いたんです。
件名には「congratulations!」とあり、英語の件名であったため、きっと迷惑メールだろうと思い、すぐに削除しました。けれども、削除した瞬間に心がざわつき、もう一度削除したメールを見返したんです。すると送信者には「アカデミアリアチ」の文字が。
なんと、コンペで3位に入賞したことをお知らせするメールだったのです。
思わぬお知らせに驚きと感謝でいっぱいになりました。
きっとこの流れは「イタリアへ行って学んできなさい」ということなのではないかと思い、半年間かけて仕事の調整をしつつ準備を進め、2019年の8月にフィレンツェに旅立ちました。
※アカデミアリアチが主催するコンペティション。テーマに沿って、課題を提出。入賞者は副賞としてマスターコースの授業料免除などがあります。
Q2:実際アカデミアリアチに入学されて、いかがでしたか?
何よりも、大好きな絵を描いていればよいという環境設定が、嬉しすぎましたね。
クラシックな壁に覆われたアトリエでは、絵を描く環境が整っていて、大変描きやすかったのです。
加えて、学校の立地が秀逸でした。フィレンツェのドゥオーモのそばにあり、朝から晩まで芸術に囲まれて学べる環境。アトリエ以外でも、街を散策しながら描いていました。
何気ないモノやコトの一つひとつが、絵のモチーフとして成立するのです。
フィレンツェは、美を呼吸する街です。美しいものを呼吸して暮らすことが出来る場所。
新鮮で好奇心をくすぐられる毎日に、内側から満たされていくのを感じました。
Q3:学校以外でお気に入りの場所は?
学校が終わった後に、いつも通っている場所がありました。それはオブラーテ図書館です。ドゥオーモを一望できる図書館で、元は修道院だった場所を改装して創られています。本当に素晴らしい場所でした。
↑はせくらさんの作品 White Forest ©Miyuki Hasekura
図書館には、子供向けの絵本コーナーもあるのですが、日本の絵本とまったく色合いが違うんですね。
日本人があまり使わないであろう色味を使っているのです。やはり、光が違うことと、その色を捉える人の文化的背景や土壌も違うからなのだろうと思います。
Q4:逆に苦労されたことはありましたか?
もちろん、小さなトラブルは毎日のように起きましたよ。例えば、鍵が開かなくてトイレに閉じ込められたとか…(笑)。けれども、それさえも一つのネタだと思って、面白がっていました。日本では、まず体験しないんじゃないかと思うような体験が思わず出来てしまうこと自体が、可笑しかったです。
言葉の壁?フィレンツェは観光地なので、大体英語でOKでしたし、イタリア語しか通じない場面でも、知っている限りのイタリア語を駆使して伝えていたので、それほど不自由さは感じなかったのです。ただ、ある方に出会ったことで、イタリア語でもっとコミュニケーションが取れるようになれたらと思うようになりました。
Q5:「ある人」とは?
イタリアの文化遺産省でルネサンス期の画家―ピエロ・デラ・フランチェスカの絵画修復リーダーも務めた、Guliano Caporaliジュリアーノ・カポラーリという画家の方です。
彼は、私の作品を気に入ってくださり、色々と言葉を交わしたかったのですが、イタリア語でしかコミュニケーションが取れなかったため、もっと会話ができるようになりたいと思い、イタリア語を以前よりも真剣に学ぶようになりました。
Q6:今後の活動についてお聞かせください。
コロナ禍でなければ、イタリアにまだいる予定だったのですが、急遽日本に帰らざるを得ない状況となり、現在に至っています。
そのため落ち着いたら、再び、日本とイタリアの2拠点で活動したいという思いはあります。
具体的には、日本の和紙や墨、岩絵の具などを使った伝統手法に、西洋絵画の技法を合わせたものを描きながら、芸術の中での東西融合を図ったり、日本文化が持つ精神性を、西洋にご紹介できたらという想いがあります。
一例ですが、日本が持つ精神性は、かつての西洋美術に大きな影響を与えたことがあります。ゴッホやモネなどが有名な「印象派」の潮流を作ったのは、当時の江戸で流行っていた大衆芸術である浮世絵が大きく関与しています。つまり、「ジャポニズム」が、「インプレッショニズム」を牽引した立役者だったんですね。
こうした、日本文化や考え方が、21世紀の今に伝播して融合したら、どうなるんだろう?という関心があります。その中で何かお役立て出来たらよいなと思っています。
Q7:最後にこれからイタリアへ留学される方へのメッセージをお願いします。
これから留学される方には、「体験こそ宝である」とお伝えしたいですね。
机上の学問ももちろん大切ですが、体験を通して体感することで、より立体的になり、そこには、創造の種もたくさん詰まっていると感じるからです。
そうした意味で、アカデミアリアチでの学びは、創造性の種を豊かに提供してくれる環境ではないかと思います。
異文化に出会い、異文化の中での体験は、自分の中にある未知の部分を、既知にするプロセスでもあり、新しい扉を開く契機となりえるのではないでしょうか。
とりわけ、イタリアは美に対して開かれた国であると思います。
至るところに、芸術品があり、美に囲まれて日々を過ごすことが出来ます。
ぜひ、機会があれば、人生における宝物―海外留学という体験を通して、心を美と喜びで満たし、自身と世界を明るく照らしていってほしいと思います。
はせくらさん、ありがとうございました!
イタリア留学での充実ぶりと、熱い思いがひしひしと伝わってくるとても素晴らしいご経験談でした。お聞きしながら、一緒にイタリアへ思いを馳せることができました。
「美を呼吸する街」とフィレンツェを形容されていたのも、印象的です。
フィレンツェでの様々なご経験、そしてそこから作品を生み出す力をお持ちのはせくらさん。
今後のご活躍も楽しみにしています!
はせくらみゆき(画家・作家)
公式サイト https://www.hasekuramiyuki.com/